男の領域
最近NHK教育テレビが変わってきている。夕方に偶然つけた三チャンネルで、UAが派手な格好で童謡をジャジーに歌っているのを見て度肝を抜かれた。UAで育つ今どきの子供は、将来一体どんな音楽を聴くことになるのだろう。と思っていたら、今度は夜中にまたもや偶然教育テレビで奇怪なものを見つけた。
昨年かそこら、姫ファッションというものが世間を騒がせていたらしいが、この番組ではいわゆる「おネエ」ではないもののかなり男性臭の抜けた男性ネイリストの「王子様」が、かぶりものをした芸人ふたり(柳原可奈子による「姫」と鴨のような格好をした有吉弘行)にネイルアートを教えていた。王子様のレッスンは役に立つものばかりで、長い爪に数日以上我慢ができないわたしもぜひ試してみたいと思わされた。「うん、きれいにぬれてるね」と言う王子様を見て、放送枠を考えれば大人向けの番組とはいうものの、教育テレビでこんな番組が流されるようになった日本は真にジェンダーフリーの社会に近づきつつある、と思った。
これは喜ぶべき進歩だ。グッチのバッグを手に、細身の体に最新ファッションを着こなし、きれいに眉をお手入れした無駄毛のない「草食動物」男性で国中があふれかえっても、結婚率・出産率がかぎりなくゼロに近づいたとしても、「男性らしさ」「女性らしさ」というものが人間の本質的なものではなく、社会の選択にすぎないということが認識されるのはすばらしいことだ。神もニーチェもとっくに死んでポストモダンも古い今、そろそろ社会もジェンダーの枷から自由になってもいい頃なのだ。
とはいえ、わたしは別にジェンダーというものを目の敵にしているわけではない。役割分担というのは社会にとってある程度必要であるとすら思う。トイレでも掃除しようかというときに、「待って、それはぼくがやるよ。これだけは男の領域だから譲れない」と夫があせって駆けてくるというのであれば。
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