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ほつれた巻き毛

幼少のみぎりから日本古来の伝統を継承してつややかな碧の黒髪だった。つまり、直径何ミリだかは知らないが、まっすぐにしか生えることができないくらいの剛毛だった(しかも毛の量が異常に多かった。初めて行った床屋さんまたは美容院で、「毛が多いですねー」と言われなかったことはない)。当然、ふわふわとした柔らかな茶色のくせ毛にあこがれた。ふんわりとほつれさせてみたかった。

風になびくこともなくつねに固定状態の直毛だったわたしと違い、幼稚園で一緒だった彼女は幼稚園児でありながらすでに、今のわたしが美容院で高いお金を払っても手に入れることのできないフェミニンな髪型(重力を感じさせない、妖精でもひそんでいそうな空気感たっぷりのふわふわルック)を完成させていた。ある日、「なんで自分のことかっちゃんっていうの、おかしいよ」と彼女に指摘され、ショックを受けたことがある。四、五歳ですでに自分のことをわたしと呼べる幼稚園児。大人だった。(ちなみに名前まで彼女は恵まれていて、そのままで芸名になりそうな素敵な名前でうらやましかった。)

高校時代に初めてパーマをかけてみたが、大失敗に終わった。母が通っている家の斜め向かいのパーマ屋さんに行ったのがおそらく間違いの元だろう。見事なおばさんパーマで、彼女のような自然にうねうねとした巻き毛とは程遠かった。後に今度はおしゃれとされている美容院でパーマにふたたび挑戦したが、やはりパーマはパーマだった。

しかし、長年反発していた茶髪がいまさら大胆でも何でもなくなった頃に、人に言われてようやく毛を赤茶色に染めてみると、髪質が変化した。毛先が自然にゆるやかなたて巻きにカールするのだ。二、三日髪を洗わないでいると。特に耳のあたりの髪(もしかしてもみあげが伸びたものだったのだろうか?)のカール具合が他よりも強く、気に入っていた。当時の彼氏に喜んで巻き毛ぶりを報告すると、「髪洗ってないんだね」と、女心はわかってもらえなかった。

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