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マニア

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日本語は難しい言語だとされている。ひらがな、かたかな、漢字と三種の文字をもつため、外国人には習得が困難だというのが一般的な(いくぶん国粋主義的な)意見だ。が、わたしはこれまで日本語が流暢な外国人を数多く見てきた。彼らはお箸と同じくらい上手に日本語を操る。これもまた日本人にとっては驚きの偉業なのだが。(ちなみに、彼らはたいてい厚かましくも日本人にしか理解できないはずの納豆すら大好きだということが多い。)

こういう非凡な言語学者たちは、おおまかに言ってふたつのタイプに分かれる。アニメファンと武道愛好家だ。どちらかといえば武道家たちのほうがより熱狂的な愛日派である。おそらく、逆境や克己を信条とするためだろう。

ダブリンに留学した際、わたしはホームシックのためか合気道クラブに入会した。驚いたことに、大男のアイルランド人の先生はそこらの日本人よりもよっぽど過激に日本人だった。道場では厳粛な秩序が保たれていた。クラスの時間が近づくと、誰が言い出すともなく、みんな何も言わずに左から右へと段位の順に一列に並んで座る。稽古中は無駄口をきく者などなく、投げられては起き上がってまた投げられに行き、優雅な「気」の踊りを舞うのだった。

というのはつまり、「敵」の手首をやさしく握ると、受け身をとれるように相手がそっとうながしてくれる、ということだ。わたしは常々合気道は「やわ」な人のための武道だと思っていた。クラブの面々をとってみても、誰一人として克己に燃えるストイックで攻撃的な武道家タイプではない。マッチョではないのだ。体格面のことを言っているわけではなく、まあ体格もそうなのだが、精神的にマッチョではない。取っ組み合いの喧嘩をする姿は想像もつかないような人ばかりだった。

最後の年に、見るからにほっそりとしていて優しそうなわたしの友人が部長になった。とても誰かをこてんぱんにのすような人ではない。当意即妙な受け答えで相手をやりこめるというのでなければ。それが、驚いたことに彼女は最近すっかり熱狂的な合気道家になりつつある。延々と受け身の練習をさせられた合宿のことを懐かしんだり、今の道場では男性陣が激しい技をかけてこないと文句を言ったりするくらいだ。

正直言って、彼女の気持ちはわかるところもある。わたしも帰国してから合気道をまたやってみようかという気になり、近所の道場に行ったことがあるが、秩序も何もあったものではないこの道場に大変憤慨したことがある。このときばかりは盾の会の一員になったような気分だった。

どんなにやる気のない者ですら、気がつくと思わず厳しい特訓を求めるようになっているのは一体どういうことなのだろう。これは武道が野蛮な過去の記憶を呼び起こすからだろうか。それとも、個々の人間などよりも大きな存在に身を任せてしまいたいという本能が刺激されるからだろうか。そういった意味で、武道は宗教と似ているとも言えるのかもしれない。宗教を信じる人には信仰がある。北朝鮮の人民には行進歌がある。ヒッピーにはマリファナと愛がある。日本には宗教や国家という屋台骨はないかもしれないが、それでも武道がある。熱狂的な武道マニアから正真正銘のやわ男まで楽しめる武道が。

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